「あれ、この子、キーボード見ながらじゃないと打てないんだ……ましてや、ショートカットキーなんて……」
新卒メンバーの画面をふと覗いて、そう感じたことはありませんか。私は何度もあります。議事録係を任せた新人が、話についていけず手元だけを見つめて一文字ずつキーを探している。資料の誤字を直すたびに、画面と手元を何度も往復して打ち直している。能力が低いわけじゃないんです。単純に、PCのキーボードに触れてきた時間が、スマホに比べて圧倒的に少ないだけなんですよね。
そんな新卒メンバーにこそ、まず身につけてほしいのがブラインドタッチ(タッチタイピング)です。IT業界の知識やツールは、正直なところ数年で移り変わってしまうものがほとんど。でも、ブラインドタッチだけは別物です。一度体に覚え込ませてしまえば、この先何十年も色褪せない「一生モノの武器」になります。今回は、私が新卒メンバーに勧めているブラインドタッチの習得法を、ホームポジションの覚え方から具体的な練習手順まで、まとめてみました。
この記事でわかること
- ブラインドタッチが「一生モノのスキル」と言える理由
- 仕事の効率化だけじゃない、体への嬉しい効果
- ホームポジションの覚え方と、1日30分・1ヶ月を目安にした練習法
- 練習に使えるおすすめの無料タイピングサイト
- 習得する上で正直に伝えておきたい注意点
こんな新卒メンバー、見覚えありませんか?

最近の新卒メンバーを見ていると、スマホの操作スキルは本当に高いです。SNSもフリック入力も、こちらが驚くくらいのスピードでこなします。ただその一方で、PCの基本操作にはあまり慣れていない子が多いなあ、という印象が増えました。スマホは使いこなせるのにPCは苦手、という世代特有の傾向があるかと思います。
考えてみれば、当然かもしれません。物心ついた頃からスマホがあって、PCに触れる機会自体が少ない世代なんですから。だからこそ、私たち先輩世代が「当たり前」だと思っているPCスキルこそ、きちんと教えてあげる価値があると思うんです。
新卒研修では、プログラミング言語やクラウドサービス、社内ツールの使い方など、教えるべきことが山ほどあります。その中でなかなか疎かにされがちなのがブラインドタッチです。ですが私は重要視しています。理由はシンプル。ブラインドタッチができていないと、他のスキルを教える効率まで落ちてしまうからです。手元を見ながらでないと打てない状態だと、コードレビューの指摘をメモするのも、Teamsで質問に答えるのも、すべてワンテンポ遅れてしまう。土台となる基礎体力がないまま応用を教えても、なかなか身につかないんですよね。
ブラインドタッチ(タッチタイピング)とは?なぜ数あるITスキルの中で「一番最初」に勧めるのか
ブラインドタッチ(タッチタイピング)とは、キーボードの手元を見ずに、指の感覚だけで正確に文字を打てるスキルのこと。要は「手元を見ないで、いつでもどこでもタイプできる」状態のことです。
IT業界で働いていると、新しいプログラミング言語、新しいクラウドサービス、新しいAIツールと、覚えるべき知識は次から次へとやってきます。正直、せっかく覚えても数年後には使わなくなっている、なんてことも珍しくありません。
でも、ブラインドタッチだけは違います。一度指が覚えてしまえば、キーボードの配列自体が大きく変わらない限り、一生使い続けられるスキルなんです。しかも覚えた後のメンテナンスが、ほとんど要りません。自転車の乗り方を忘れないのと同じで、体に染み込んだ感覚はそう簡単には抜けないもの。だからこそ、移ろいやすい技術知識よりも先に、まずこの土台を固めてほしいと思っています。
ブラインドタッチが仕事にもたらす3つのメリット
具体的に、どんな良いことがあるのか整理してみました。
- 単純に仕事が速くなる
手元を見ずに打てるということは、資料や画面から目を離す回数がぐっと減るということ。議事録を取りながら会議に参加する、コードを見ながらそのまま入力する。そんな場面で威力を発揮します。 - 画面と手元の視線移動が減り、体がラクになる
これは意外と見落とされがちなポイントです。キーボードを見て打つ人は、無意識のうちに「画面→手元→画面」と何度も視線を往復させています。この積み重ねが、実は首や肩への負担につながっていることが多いんです。ブラインドタッチが身につくと、視線は画面に固定されたまま。肩こりなど、いわゆる「PCワーク病」の軽減にもつながります。長時間パソコンに向かう作業は「VDT作業」とも呼ばれ、こうした作業と身体への負担については厚生労働省の労働衛生ガイドラインでも指摘されているところです。因みに私は1日中PCに向かっていますが肩こりは全くありません。 - 思考が途切れにくくなる
「今何て打とうとしていたっけ」と、タイピングに気を取られて考えが中断してしまうことがなくなります。頭の中の言葉が、そのまま指先から出てくる感覚になる。資料作成やコーディングでも、思考の流れを止めずに手を動かせるようになりますよ。
実際にどれくらいで身につく?私が新卒メンバーに勧めている練習法

「今からでも身につきますか?」とよく聞かれますが、答えはシンプルに「はい」です。しかも、そこまで大きな労力は必要ありません。
私が新卒メンバーに勧めているのは、平日1日30分程度の練習を1ヶ月続けるというシンプルな方法。特別な教材や高価なソフトを買う必要はなく、無料のタイピング練習サイトで十分です。大切なのは、毎日、短時間でもいいので続けること。週末にまとめて2時間やるより、平日に毎日30分やるほうが、確実に指に染み込んでいきます。
最初の1週間は、正直かなりもどかしいと思います。今まで手元を見て打っていた分、見ないで打とうとすると一気にスピードが落ちるからです。ここで手元をチラ見してしまうと、いつまで経っても手元を見るクセが抜けません。多少遅くなってもいいので、「見ない」を徹底する。これが、上達の一番の近道です。
まずは「ホームポジション」を指に覚えさせよう
練習を始める前に、必ず押さえておきたいのが「ホームポジション」です。キーボードの「F」と「J」のキーに、触るとわずかな突起があるのに気づいたことはありませんか。あれは、指を置く位置を目で見なくても分かるようにするための目印なんです。
やり方はこうです。左手の人差し指を「F」に、右手の人差し指を「J」に置きます。残りの指は、そのまま隣のキーに軽く乗せる。これが基本の指の置き方、ホームポジションです。どのキーを打つときも、必ずこの位置に指を戻す。これを意識するだけで、上達のスピードがぐっと変わります。最初はゆっくりで構いません。「どの指がどのキーを担当するか」を、まず体に覚えさせることを優先しましょう。
練習に使えるおすすめタイピングサイト
- e-typing:定番の無料タイピング練習サイト。基礎練習からビジネス文章まで幅広いメニューがあり、初心者の基礎固めに向いています。
- 寿司打:お寿司をモチーフにしたゲーム感覚の練習サイト。純粋に「打つのが楽しい」と感じられるので、習慣化のきっかけにぴったりです。 - タイピング練習用アプリ(スマホ・PC両対応のもの):スキマ時間にサクッと練習したいなら、こうしたアプリを併用するのも手ですね。
どれも無料で始められます。まずは気軽に触ってみて、自分に合うものを続けるのが一番です。
正直に言うと、ここは注意してほしいポイント
いいことずくめのように書いてきましたが、正直に伝えておきたい注意点もあります。
- 最初の数日は、むしろ入力速度が落ちます。手元を見て打つクセが抜けるまでの、一時的な「停滞期」だと思ってください。焦らず続けましょう。
- 練習をサボると、あっという間に元のクセに戻ります。1ヶ月間は、多少無理をしてでも毎日続けることが大切です。
- 完璧を求めすぎないこと。多少ミスタイプがあっても、修正しながら打てれば十分実務で通用します。最初からノーミスを目指すと挫折しやすいので、まずは「見ないで打つ」ことを優先してください。
- タイピングが速い=仕事ができる、ではありません。あくまでブラインドタッチは土台となる基礎スキル。速さそのものを目的にしすぎず、「思考を止めずにアウトプットできる状態」を目指すのがおすすめです。
まとめ:スマホ世代だからこそ、PCの「基本の型」を体に入れよう
ブラインドタッチは、派手さのないスキルです。習得したからといって、すぐに評価が上がるようなものでもありません。それでも、一度身につければ一生モノの武器になり、仕事のスピードだけでなく、日々のPC作業のストレスまで軽減してくれます。
一言でまとめるなら、「派手さはないが、他のすべての基礎になる」。これが、ブラインドタッチという投資の価値です。スマホ操作に長けた新卒世代だからこそ、まだ触れてこなかったPCの「基本の型」を、今のうちにしっかり体に入れてほしい。ホームポジションを覚えるところから始めて、あとは1日30分、たった1ヶ月の投資です。今日から、キーボードの手元から目を離す練習を始めてみてくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q. 社会人になってからでも、ブラインドタッチは身につきますか?
A. もちろん身につきます。年齢や経験に関係なく、正しい指使いを意識した練習を続ければ、1ヶ月ほどで手元を見ずに打てる感覚がつかめてきます。
Q. ホームポジションとは何ですか?
A. 「F」「J」キーの突起に人差し指を置いた状態を基準にした、指の基本の配置のことです。どのキーを打った後も必ずこの位置に指を戻すことで、手元を見ずに正確に打てるようになります。
Q. どのくらいの速さを目指せばいいですか?
A. 最初から速さを目標にする必要はありません。まずは「手元を見ずに、ミスがあっても修正しながら打てる」状態を目指しましょう。速さは、続けているうちに自然とついてきます。
Q. キーボードの配列(JIS配列・US配列など)はどちらで練習すべきですか?
A. 会社や自宅で普段使っているキーボードの配列で練習するのが一番です。配列を変えると指の感覚を一から覚え直すことになるので、まずは今使っているものに集中しましょう。
Q. 練習を続けるコツはありますか?
A. 「毎日決まった時間に少しだけやる」と決めてしまうのがおすすめです。通勤前や昼休みなど、ルーティンに組み込んでしまうと続けやすくなりますよ。
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